ドイツが誇る飛行船「ツェッペリン(Zeppelin)号」が、ツェッペリンの時計デザインを始めとするブランドコンセプトである。ツェッペリン号は、1900年にフェルディナンド・フォン・ツェッペリン(Ferdinand Graf von Zeppelin)伯爵が完成させた”硬式”飛行船。それ以前の従来の軟式飛行船は、ガスの圧力で外形を維持しながら飛ぶというものだった。ガス袋そのものを船体としていたため変形しやすく、飛行速度が遅いのが欠点である。それに対し硬式飛行船はアルミニウム合金などの軽素材で骨格を作り、その上へ麻や綿の布を張るという構造。これにより船体の外形を保持することができ、軟式飛行船とは比較にならないほどの高速飛行を実現した。さらに大型化も可能となり搭載貨物が増大し、新たな輸送手段として革命を起こしたのだ。
ツェッペリンのコレクションの中で最も代表的なものが、「100周年記念モデル(SPECIAL EDITION 100 YEARS ZEPPELIN)」だ。通常、腕時計の○○周年記念モデルと言えばそのブランドの創業年から数えるもの。ところがツェッペリンが指す100周年とは、他でもないツェッペリン伯爵が開発した世界初の硬式飛行船ZEPPELIN号の第一号船のことである。第一号「LZ1」は、1900年7月2日に南ドイツの美しいボーデン湖畔のフリードリヒスハーフェンの大空を飛び、初飛行を成功させた。100周年記念モデルは、その「LZ1」の機体をデザインのベースとした、ドーム型ガラスやタキメータースケールが最大の特徴である。
シリーズには2つ目や3つ目のサブダイヤルを備えたクロノグラフや、シンプルな3針デイトモデル、文字盤上からムーブメントの動きが鑑賞できるスケルトンモデルなどの魅力的なラインナップが並ぶ。全てのモデルに共通して、ドイツ語で「100周年」を意味する「100Jahre」の文字がダイヤルに配されている。高貴な雰囲気の、先端の丸いブレゲ針も特徴だ。大空を自由に飛ぶという人々の夢を叶えた、「LZ1」の誇りを感じさせる完成度である。
1924年にドイツ、フリードリヒスハーフェンのツェッペリン工場で建造された「LZ126」という飛行船の歴史を讃えて誕生した「LZ126 ロサンゼルス(LZ126 LOS ANGELES)」。モデル名に”ロサンゼルス”の名がつくのは、「LZ126」がドイツ政府からアメリカへと譲渡された飛行船だからである。長距離便として開発された史上初の旅客飛行船で、わずか81時間で大西洋を横断に成功したことから世界的なニュースにもなった。そんな「LZ126」をモチーフとするこのシリーズは、計器をイメージさせるタキメーターや、クラシカルなビザン数字のインデックスが魅力。
文字盤のバリエーションも多彩で、中には昨今のクロノグラフには珍しい、心拍数を計測するパルスメーターを備えたモデルも。シリーズに共通して採用されている流線的な針はビザン数字インデックスと非常に相性が良く、ツェッペリンの中でも特に知的な雰囲気を演出している。